輪島塗の汁椀で朝食を・輪島塗汁椀その4・海と山の幸蒔絵汁椀
この汁椀の素材は「あすなろ」。あすなろは、石川県の県木でもあります。
このあすなろの名前の由来は、明日こそ檜(ひのき)になろう、あすはなろう、という意味とされ、立身出世の願いがこめられています。
この汁椀の口は、唇に触れる感触が大変優しい、唇の厚み分のくぼみをつけた大雅堂オリジナルの汁椀です。
軽く、使いやすい汁椀に、色漆で海と山をイメージした蒔絵を描きました。
なんと、裏側には、へそがあるんです!なぜ?
明日は檜(ひのき)になりたい、では、あすなろは檜より劣るのか、という事になりますが、そんなことは有りません。
能登や輪島ではあすなろの木を、家の柱や鴨居・敷き板などの全てに使っています。
その時、表面加工に使われるのが漆(うるし)です。
漆を塗ると木は身体の一部を取り戻すかのように漆を沢山吸い込みます。
木目はより鮮やかになり、また拭けば拭くほど漆の艶が出て美しくなります。
あすなろは、言葉からとれば檜の次と言うことになりますが、日本人の美意識の中には
「最高の一歩手前」というのがあります。最高はその先はなく、最高の一歩手前はそれから
上があり、向上心につながるという訳です。「あすなろ」もそんな日本人の心からうまれた
素晴らしい名前といえます。
また、物理的に言えばこの素材は軽いのです。とにかく軽い。
椀の素材は欅(けやき)が良いとされていますが、欅は重い素材です。軽くするには薄くすれば
いいのですが、あまり薄くすると熱を伝えにくいという木の特性が失われます。熱いみそ汁を
入れると、「あちち!」と言うことになってしまいます。
それらを補うのがあすなろ材です。あすなろは軽いのでふっくらと温かい肉厚の椀に作っても
重くなりません。
そんな素晴らしいあすなろの木で、輪島塗汁椀を作りました。
汁椀の形は、水をすくうときに両手を合わせたような形。これこそ器の原点です。
手になじむ、手に吸い付くとはこのことか、と思います。
また、椀の高台はその内側に特長があり、お年寄りや子供でもしっかり持って頂けるように
指かかりがあります。
汁椀の糸底内側中央には、「へそ」があります。
これは「如意宝珠(にょいほうしゅ)」です。
ここには蒔絵で「長楽萬年」や「富貴安楽」などの吉祥文字を描き入れてあやかろう、というものです。
字体は「吉金文字」を使用。
この吉金文字は、表現する言葉の意味の、本来の形を残した文字です。
椀の高台の外縁には、美しい色合いの色漆で海と山をイメージした蒔絵を描きました。
漆の様々な美しい色は、春夏秋冬の四季を表し、美しい日本の自然を海と山のイメージに
加味したものです。
季節季節のおいしいものを、この椀に盛って、海や山・大自然の恵みに大いに感謝して
「有難くいただく」という思いが込められています。
輪島の美しい自然が生み出した実りを、有難く感謝して生まれた輪島塗りです。
この汁椀は、オーダーを承りご相談の上製作させていただきます。納品まで約5ヶ月でございます。
【商品データ】
定価 汁椀・海と山の幸蒔絵(大)1客74,800円(税込)
![若島](https://www.taigadou.com/wp-content/uploads/2020/12/syatyou.wakasimajpg.jpg)
![若島](https://www.taigadou.com/wp-content/uploads/2020/12/syatyou.wakasimajpg.jpg)
若島基京雄(わかしまきみお)
全国を行商して歩いた祖父・父は、旅先で大変可愛がって頂き、現在でも祖父・父を知るお得意さまが多数ございます。
祖父・父は、「物がなくても売る」達人 営業マンでした。
お客様の前で輪島塗の器の仕上がりのイメージを、すらすらと絵に描いて見せ、仕上がった見本が無くても注文を取りました。器の形や色、蒔 絵・沈金の模様まで、その場で細かくうち合わせができ、仕上がった品は、大変お喜び頂いたそうです。
私もそうなりたいと、自己流ながら勉強し、輪島の技法の全てを頭にたたき込み、
お客様の求める物のイメージを形にしたい、と思っています。
現在は、器物の 形から、蒔絵・沈金の図案までお客様のご要望に合わせ、
自分で作図して制作にあたります。
頭の中で見える仕上がりの姿を、木地師から蒔絵・沈金師に細かく 指定し、
喜ばれる、そして末永く愛して頂ける輪島塗を生み出していきたいと考えております。
輪島漆器商工業協同組合 組合員
石川県輪島漆芸美術館 友の会 事務局長
合気道 奥能登合氣会 会長
輪島漆器大雅堂株式会社 代表取締役