お客様からの特注依頼・篳篥(ひちりき)の箱に雅楽の舞を蒔絵にて
お客様からの特注依頼をいただきました品が仕上がりました。
大変格調高く・上品で、美しく仕上がりましたので、許可をいただいてご紹介させていただきます。
これは、篳篥(ひちりき)を入れるための箱だそうです。
ひちりきは、雅楽の演奏に使われる笛のひとつ。
蒔絵は、雅楽の舞を蒔絵で描きましたが、この箱は御注文主様が
大切な方への贈り物としてご注文下さったもので、舞の写真を御預かりして
衣装やポーズもそのままに、蒔絵したものです。
「篳篥(ひちりき)の箱に、蒔絵を描いて欲しい」
お客様よりご依頼をいただきましたひちりきの箱は、木製で、縦20.8cm 横6.8cm 高さ3.9cmの、小さめの箱で、外側を溜塗にして蒔絵を施す、というご希望でした。
篳篥の箱は出来上がった専用のものをお送りいただいて製作いたしましたので、内側はあえて輪島塗にせず、表に合うように漆で染めました。
輪島塗にすると、漆の厚みで蓋が閉まらなくなる・笛が入らなくなる等、が考えられたからです。
ひちりきの箱の外側は、布着せ本堅地輪島塗に仕上げ、色は溜塗になっています。
溜塗(ためぬり)は、黒や朱塗りより、1回多く手間がかかります。
はじめに朱漆を塗り、次に朱合漆(しゅあいうるし)というべっこう色の漆を塗っているからです。
その雰囲気は、戦前の天皇陛下の御車が溜塗であったように、高貴で落ち着いていて華麗です。
溜塗とは
中塗りに朱漆を塗り、上塗りに朱合い漆という半透明の漆をぬる技法。
漆は時間が経つにつれて透明度が増してくる、という特性を生かし、中塗りの朱が漆が薄くのるふちのほうから透けて、落ち着いた中にも華やかさのある、雰囲気をかもします。
経年の変化を、逆に楽しみにしていただきたいものです。
蒔絵は、雅楽の舞の一場面を描くということで、実際に舞われている写真を1枚御預かりして、図を起こし、蒔絵致しました。
このお客様は、どうしてひちりきの箱に蒔絵することを考えられたかというと、以前からご自身が雅楽に用いられる笛用の筒に蒔絵を施すご注文をいただいており、これまでに何点かお納めさせていただいておりまして、大変お気に召していただいておりました。
この度は、御客様はじめグループの皆様で、「大切な方の還暦のお祝いにしたい」とのことで、記念に残る特別なひちりきの箱を特注したいということでした。
価格的には確かに「高い」というイメージの輪島塗ですが、何人かでのご注文ならお求めやすくなります。
また、それにもまして、特注の輪島塗は、「世界で一つ」の特別な贈り物が仕上がります。
きっと、末永くご愛用いただけることでしょう。
蒔絵のモデルは、贈られるご本人様の舞姿の写真をもとに、作図しました。
雅楽の舞「還城楽」というそうで、装束や道具も詳細に写し、蒔絵致しました。
蒔絵の構図や技法は、お客様のご希望に添えるようご相談しながら製作致します。
贈られる方は、さぞかし驚かれることでしょうね。
喜ばれる場面が目に浮かぶようです。
蒔絵は、梨子地を用いて華やかさを出しました。
みやびやかな舞ですので、華やかで、しかもきりっとした雰囲気が伝わるように
蒔絵いたしました。
家紋蒔絵は、横面につけました。
この特注・ひちりきの箱は、製作期間約7か月にて仕上がりました。
特注の場合は、特に時間的な余裕をいただけますと助かります。
できるだけお客様のご希望に添えるように製作したいので、相談の期間も必要だからです。
「こんなものができないかな?」どうぞお気軽にお問い合わせください。
誠心誠意、ご相談させていただきます。
輪島漆器大雅堂は、貴方だけの特注輪島塗の製作も得意です。
今までに見たこともないような輪島塗でも、創業大正11年の経験と豊富な知識・
優れた多数の職人たちが、貴方の思いを形にするお手伝いを致します。
輪島塗の工程は、どれをとっても一つ一つ手作りのオーダーメードと同じです。
ですから特注だから、お誂えだから、ぐんと価格が高くなるということはありません。
また、色や模様だけでなく、器物の形からお誂え可能です。
オーダーは難しくありません。
「こんな感じで、、、。」というような、頭の中のイメージからでも、段々と形にしていきます。
特注・お誂えは、お気軽にご相談くださいませ。
世界で一つの輪島塗を、貴方の思いのままに製作いたします。
輪島漆器大雅堂は、そんな楽しみな仕事が大好きです。
ご用命のほどを、心よりお待ち申し上げております。
若島基京雄(わかしまきみお)
全国を行商して歩いた祖父・父は、旅先で大変可愛がって頂き、現在でも祖父・父を知るお得意さまが多数ございます。
祖父・父は、「物がなくても売る」達人 営業マンでした。
お客様の前で輪島塗の器の仕上がりのイメージを、すらすらと絵に描いて見せ、仕上がった見本が無くても注文を取りました。器の形や色、蒔 絵・沈金の模様まで、その場で細かくうち合わせができ、仕上がった品は、大変お喜び頂いたそうです。
私もそうなりたいと、自己流ながら勉強し、輪島の技法の全てを頭にたたき込み、
お客様の求める物のイメージを形にしたい、と思っています。
現在は、器物の 形から、蒔絵・沈金の図案までお客様のご要望に合わせ、
自分で作図して制作にあたります。
頭の中で見える仕上がりの姿を、木地師から蒔絵・沈金師に細かく 指定し、
喜ばれる、そして末永く愛して頂ける輪島塗を生み出していきたいと考えております。
輪島漆器商工業協同組合 組合員
石川県輪島漆芸美術館 友の会 事務局長
合気道 奥能登合氣会 会長
輪島漆器大雅堂株式会社 代表取締役