立雛(たちびな)吉祥蒔絵(きっしょうまきえ)大窪敏正作
この立雛・吉祥蒔絵は、愛らしい表情の木目込みの頭(かしら)に、ふんだんに蒔絵を施した着物が似合う、上品な立雛です。 可愛いお子さまの健やかな成長を願って、また女の子の厄を祓って健康を祈願する上巳の節句にはぴったりの、吉祥蒔絵の立雛です。
男雛・女雛の着物部分には、青海波(せいかいなみ)・春秋(しゅんじゅう)・唐草(からくさ)・宝づくし(たからづくし)等の、願いを込めた蒔絵を描いています。
青海波(せいかいは)
寄せては返す波は、止むことなく連綿と続くことから、幸(さいわい)が末永く続くことに通じる。 舞楽に「青海波」という曲があり、衣装の下襲(したがさね)に青海波を用いたことから、この文様を「青海波(せいかいは)」と呼ばれるようになったのが名の由来。
春秋(しゅんじゅう)
春の桜と、秋の紅葉が共に描かれた文様の事を春秋という。 現実には桜と紅葉が共にあることはなく、この図は夢の世界、そして、古来より人々が憧れ続ける理想郷の風景かもしれません。 この理想郷は、底にすむ人々は不老不死であるという、美しい譜受け栄の広がる、夢の様な世界です。
唐草(からくさ)
唐草のツルは、とぎれることなく連綿と続くことから、幸が末永く続くことにつながります。美しい曲線を描いて続いてゆく唐草は、古来より大変好まれ用いられてきた吉祥文様です。
宝づくし(たからづくし)
古来より人々が宝として珍重するいくつかの貴重な品々を文様にしたものを、宝づくしといい、富貴、とりわけとみに恵まれるよう願いがこめられた吉祥文様。 また、華やかさを際だたせる青貝を随所にちりばめ、美しく仕上げております。
《内裏雛(だいりびな)の右、左》
内裏雛の右、左は、よく話題に上る問題です。お宅ではどうしていらっしゃいますか? 内裏雛は本来、左側すなわち向かって右が男雛で、左が女雛であったが、明治の終わり頃から次第に逆になって、今日では右側すなわち向かって左が男雛、右が女雛になっている。 日本では古来、左が上位におかれ尊ばれたため、男雛が左に据えられていたのである。 昔、何でも御所を中心にして考えられた。宮中の紫宸殿は南向きで、北を背にしている。そして「天子南面」という言葉があるように、天皇は南の方を向いている。すると、左手は東・右手は西になる。それで、宮中の東側を護る近衛兵を「左近衛」西を護る近衛兵を「右近衛」と称し、紫宸殿の前の東側、つまり右手にある桜を「左近桜」西野向かって右の橘を「右近橘」という。したがって御所では向かって右が東で上、向かって左が西で下位となる。 だから左大臣が上位で右大臣が下位である。こうした習わしから見ても内裏雛は、向かって右に男雛、向かって左に女雛がおかれるべきである。 ところがヨーロッパにおいては、中世ナイトの時代に、ナイトがかよわい婦女子を助けるために婦人を左手で抱え、右手で剣を握って戦ったことから、男子を向かって左、女子を向かって右とする順位が決定づけられたという。 日本ではたまたま、大正天皇・皇后が御大典のとき、東京の宮城においては洋装で立ったため、西洋礼式にならい、天皇が向かって左、皇后が向かって右に立ち、「御真影」もそれにならったため一般もそれにならい、内裏雛の飾り方にも影響した、といわれる。 「正月はなぜめでたいか暮らしの中の民俗学」岩井宏實著より
【商品データ】 定価 997,500円(敷き板付き) 寸法 男雛H320 mm 女雛H240 mm 素材 天然木 布着本堅地輪島塗