ひのきのおわん

この記事は約3分で読めます。

ひのき材で作った、輪島漆器大雅堂株式会社社長考案の自慢の椀の話です。

輪島漆器大雅堂オリジナルの輪島塗ひのき材の椀

輪島漆器大雅堂オリジナルの輪島塗ひのき材の椀

 

輪島塗の椀木地と保温性について

輪島塗のお椀の素地は主にケヤキという木を使います。

最近少なくなりましたがミズメザクラやトチも使います。

ケヤキやサクラは薄く挽くことができますが、実は、薄く挽くと木の特性である保温性がなくなってきます。

簡単に言いますと熱いお味噌汁を入れると、お椀を熱くて持てないということになります。
塗師屋自慢の薄挽きのお椀は自己満足でしかないのではないかと思うほどです。

保温性を生かすにはある程度木地を厚く作るしかないのです。

ここで問題になってくるのはお椀の重さです。

木地を厚くすると重くなります。また、薄くすると熱くなります。
どうしたらいいのでしょうか?

厚くても軽い素材をつかえばいいのだという結論に至りました。

人間国宝・川北良造先生に聞いた!

十数年前になりますが石川県山中の人間国宝でいらっしゃる川北良造先生の講演会に参加させていただいた時のお話です。

日本にあって中国に無い木とは?

川北良造先生は、「日本にあって中国にない木は、ヒノキです」とおっしゃっていました。

当時は中国から拭き漆のお椀がたくさん輸入されており、差別化する方法を模索していました。中国では、主に棗という木が使われているというお話でした。

正直、棗の木はケヤキの木に似ていて拭き漆に仕上げるとパッと見たところなかなか区別がつきません。さらに最後の工程の上塗をしてしまえば、もはや堂々たる漆塗のお椀です。

外国産だ日本産だというようなところで争っていても、結局、安く作るにはどうするかということなので、そこには、ものづくり日本の魂はありません。

ほんとうに考えていかなくてはいけないことは、最初のとっかかりとして、いかに楽しく喜んで使ってもらえるかだと思います。

さらに深堀すれば、技術は物理的手段であって、製作時にいやがおうにも内包されてしまう意図と心根をいかに遮断するか、そして、いかに自身を普通に高めるかだと思います。

普通とは、無理やりではないということです。かけ引きも欲もないということです。

難しくなってきましたので、初めに話を戻します。

ヒノキは軽くて粘りがあるのと木材として植林されており、ケヤキやサクラなどのようになくなっていく可能性がより低いのでお椀の素地として使っていく価値があると思います。いい木地は木目も細かくて成形もしやすです。

ひのきで、輪島漆器大雅堂オリジナルの輪島塗椀を作る

ひのきの難点はヤニが出ることでしょうか。これについてはある方法でなんとか処理できることがわかりました。

次は、お椀の形ですが、両手で水をすくう時の手の形にはまるようにと考えました。

不思議なことに手にお椀が密着するとお椀の重さを感じにくくなります。水をすくう時の水だけの重さを感じられるということです。ということは、今から口にするものをより敏感により深く感じることができるということになります。

ここが自慢のひとくふう

このひのきの椀は、高台の内側に指を入れると少し出っ張りがあり引っかかるようになっています。

指が滑らずしっかり持つことができます。

高台がある器と高台がない器の違いは色々ありますが、今の時代でも実際に感じてなるほどと納得できることは、高台があるものはしっかり持つことができるということです。

お椀を洗剤で洗うときなどでも高台のないものは滑ってしっかり持つことができません。注意していても滑って落としてしまうこともあります。

塗の技法は、輪島地の粉による布着本堅地です。輪島塗という名称で呼ぶことができるお椀はこの技法で仕上げたものだけです。

詳しい技法は割愛しますが、簡単に言いますと、丈夫で長持ち、修理もしやすいということです。

値段も張りますが、ご納得いただくとができましたら、ぜひ、使っていただきたい一品です。